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2010.07.21

ストーリーとしての競争戦略

最近流し読みすることが多かった中で、ひさびさに「ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 -(楠木健著)」は何度も読み返しながら読んだ。こんなにじっくり読んだのはクリステンセンのイノベーションのジレンマ、解以来かも。

まずAmazonの「なかみ検索」で読める前書きが非常に良い。ビジネスの成功で、理屈で説明がつくのは2割に過ぎない、でも8割が理屈じゃないからこそ理屈が大事であると楠木さんは言う。なぜなら「何が理屈でないか」を説明するには、まず「理屈を知る」必要があるからである。学者さんの立場から本の主な読者である実務家への、本書を読む動機づけとして真実味と説得力を持った、これまた「理屈」である。

そして戦略の本質とは「違いをつくって、つなげる」ことである、とシンプルに定義されている。他社と違いがなければ経済学でいう「完全競争」となり余剰利潤はゼロとなる。だから「違い」をつくらなければならない。
さらに、戦略とは、映画や小説のようにストーリーとしての優劣があると説く。「コスト削減のためだけにオフショアを使う」というような筋の悪い話は悪い戦略であり、文字通り「話にならない」。「違い」を生み出すさまざまな打ち手が相互作用して、顧客へのユニークな価値提供と、その結果として生まれる利益に向かって駆動していく論理に着目すべきであり、「違い」を「つなげる」ためにはストーリーが必要であるという。

ストーリーとはアクションリストでも、法則でも、テンプレートでも、ベストプラクティスでも、シミュレーションでも、ゲームでもない。何でないかを示す形で、従来の戦略論がなぜうまくワークしないか、丁寧に論理展開される。

ビジネスにおける勝ち負けの基準は、「長期にわたって持続可能な利益」が得られるかどうかであり、戦略によって達成される目標もそこになければならないと明言される。業界の競争構造(Where,When)、競争戦略としてStrategic Positioning = トレードオフを前提とした位置取り(What)、Organization Capability(How)、それらを論理をもってつなぐ戦略ストーリー(Why)が因果論理の束となったときに競争優位が生まれ、目的としてのコンセプトが達成される。

楠木さんがストーリーにこだわる理由として、以下の一節がある

まずは自分で心底面白いと思える。思わず周囲の人々に話したくなる。戦略とは本来そういうもの
であるべきです。自分で面白いとおもっていないのであれば、自分以外のさまざまな人々がかかわる
組織で実現できるわけがありません。ましてや会社の外にいる顧客が喜ぶわけがありません。

まさに膝を打つくだりだった。大量のパワポをつまらなそうにめくりながら、うまくいきそうな「静止画」的な要素が全部入りされた戦略より、いきいきと未来を切り開く意志をもって、ストーリーで語られる戦略のほうがきっと楽しいし、ワークする確率も高いだろう。

本書は、面白いストーリーを「持続可能な長期利益」につなげる「打ち手」でがっちり組み上げるために、理屈で説明のつく2割を徹底強化するための本と言える。読み終えた暁には、周りの事例が、なぜ悪い戦略なのか、なぜうまくいかないのか、逆にうまくいっているのはなぜか、の分析を行う際に、そこに「ストーリー」があるかどうか、「筋の良い話になっているかどうか」という新たな評価軸で判断できるようになっているだろう。


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