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2004.04.15

Googleに見るインターネットのあちら側の結末

Googleの独自技術はどこまで汎用的で競争力があるのかに対するトラックバック。

Googleが持つ競争力について鋭くまとめておられる。いつもながら梅田さんのBlogの記事は考えさせられることが多い。ただ、最近の「Googleが次世代のコンピューターメーカーの姿」という流れについては、あまり同意できない点が多々ある。今日はそのことについてまとめてみる。

まず、梅田さんのBlogでGoogleの競争力として挙げられていた点について引用する。

(1) 10万台のコンピュータを並べて出来上がったGooOSで動くスーパーコンピュータと、 (2) それを作り上げたPh.D連中の才能と、 (3) そのコンピュータの中にどんどん溜まっていくデータ、の3つだと規定している。
上記の3点について、それぞれ意見を述べていこうと思う。

まず(1)だが、GFSや独自の高速検索技術などを搭載して、クラスタリング用途にカスタマイズされたLinuxベースのGoogleOSに注目されているようだ。高度なサービスの裏で動作する、このブラックボックス化された独自技術が競争力の源泉だ、という論理はうなずける部分もある。しかし、検索エンジンとしての機能に限定して考えるならば、他社でも同様のサービスは比較的容易に提供できると思う。YahooがGoogle検索エンジンを使わなくなったことは記憶に新しいが、これは代替技術をすぐに入手できることの裏返しだ。理由は明白で、差異化がソフトウェアレイヤーのみに留まっており、ハードウェアは汎用PCを使っているに過ぎないということに尽きるだろう。使える素材が同じPCとLinuxで、勝負のポイントはカスタマイズOS+ミドルウェアだけ、というのでは他社でもすぐに追いつけることは容易に想像できる。RAIDを使わない独自のファイルシステムやユニークな検索技術などに対して、純粋な技術的興味は湧くものの、残念ながらそれだけでは圧倒的な競争力を持つには至らない、というのが私の見解だ。

実際のところ、検索技術に特化したベンチャーはたくさん台頭してきており、これからもその傾向は続くだろう。(『Google』はもう古い? 技術革新にしのぎを削る検索各社) (Amazon、検索サービス提供で「技術サービス企業」目指す

特にGmailサービスについては、個人的にはGoogle没落の兆しなのではないかと見ている。1GBというメール容量がサービスのアピールポイントになってしまっており、どちらかというとメールの中身を検索して広告をだされてしまうというネガティブな要素に人々の関心が移ってしまっている。概して、容量など数値で勝負しようとすると、サービス競争は泥沼に陥る。早速、類似サービスも始まっているようだ。「こっちは広告がでない。」なんてことがセールストークに含まれる始末である。

Gmailサービスの成功の可否について本質的な話をすると、インターネットの"あちら側"にメールデータをもっていかなくても、ユーザーはWindowsClientとメーラー(Outlookは嫌ですが^^;)で十分満足している、という現状にまず注目したい。GoogleがWindowsを競争相手に見立てて、今までインタネットの"こちら側"にあったデータを"あちら側"に持っていこうとする戦略自体は理解できる方向性だ。しかし、プライベートな内容を沢山含んだデータを"あちら側"に預ける事に伴うリスクまで考えれば、現状で十分満足できていると思われるメール管理分野に提供されるGmailサービスは、持続イノベーションにすら該当しないのではないだろうか。さすがにプライバシーの侵害とみなして、過剰反応を示す動きには閉口させられるが、Gmailサービスがこの先難しい舵取りを迫られることだけは確かなようだ。

さて、(2)の優秀なPh.Dについてだが、大手ベンダーにはもっとたくさんの優秀な博士が腐るほどいるはずである。スタッフの優秀さのみで勝負がきまるのであれば大手が必ず勝つはずだ。国内を例にとっても、確か日立が一番博士を多く擁しているが、必ずしも家電メーカの中でトップにはなっていない。勝敗を決するのは「イノベーションの解」であった通り、これまでに無かった市場で「人々の済ますべき仕事」に、いかに効率良く応えるかで決まるはずだ。Googleは、検索サイトという新しい市場において、膨大な情報から欲しいデータを取得する優れた手段を人々に提供した。だから現在の地位があるのだと思う。勿論スタッフが優秀であるに越したことはないが。

次に、(3)のGoogleが保持するデータ(大量のWebキャッシュや整理されたMAP)だが、これもWeb全体からみれば、まだまだ十分な量とは言うことはできないようだ。さきほどの『Google』はもう古い? 技術革新にしのぎを削る検索各社から引用すると、

Googleがすべてを網羅していると考えるのは間違いだと、専門家たちは言う。今日の検索エンジンは、ウェブ全体のわずか1%ほどしかカバーしていないおそれがあり、その大きな原因は、オンラインリソースを見つけ出し検索結果に反映させる方法が不十分なことにあるというのだ。  「非常に物足りない」とヘザリントンさんは言う。「図書館へ行って、棚から本を1冊しか取らないようなものだ」

という指摘もある。検索分野の競争はこれからが本番だといえるだろう。しかし、Googleが先行して、今有利な立場にあることは事実だ。では、インターネットはこれからも"あちら側"での勝負が焦点になるのであろうか。私はそうは思わない。理由は以前の投稿「これから10年間のソフトウェア産業の行方」「MicrosoftはIOS(InternetOperatingSystem)も支配する」からどうぞ。

Google批判だけで話が終わっても建設的ではないので、これからの展望も書いておく。インターネットの"あちら側"において、Googleの一点集中型の情報発電的なアプローチに一定の成果があったことは評価できる。しかし、やはり本命はP2Pによる分散アーキテクチャだと個人的には考えている。PCの誕生以来、抽象化の道を突き進み、何層もレイヤーを積み上げてきた結果、勝者はIntelとMicrosoftに決まった。これより上のレイヤーでは、もう寡占的な勝者は現れないだろう。一時的に優位な立場になっても、Microsoftの統合対象になるだけである。

上層レイヤーで幾ら頑張っても勝機がない以上、Wintel支配体制をひっくり返すには、より下層のレイヤーつまりハードウェア層からの再構築が必要である。それを今やろうとしているのが、YUBLOGさんが(GoogleとSCEI)の中で言われているとおり、Sony,IBM,Toshiba連合により取り組まれているCellProjectだ。また、カスタムLSIを従来の1/10の期間で生産するという半導体製造分野の破壊的イノベーションも着々と準備が進んでいるようだ。このプロジェクトを率いておられる東北大の大見教授の講演は、ぜひ一度見ておくことをお勧めしたい。(2003年度「POFコンソーシアム公開講演会」

製品やサービスにおける競争の勝負の分かれ目が、ブラックボックス化された特定の要素にあることは間違いない。ただし、これからの数年間は、ソフトウェアよりはハードウェア分野で革新がたくさん起こり、それに伴ってハードウェアにおいていかに差異化を図るかで勝敗が決まるようになるだろう。

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Comments

記事を踏まえて、P2Pの今後を考えるとワークプレース(IBM)を横目にみて、GoogleのシンプルなインターフェースとGroove netとの連携による互いの長所を活かしたシステムデザインが大変面白くなっていくと思います。
今後機会がありましたら、これらとの評価記事を期待しております。

Posted by: 東  勲 | 2004.05.15 at 04:14 PM

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