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2004.04.01

これから10年間のソフトウェア産業の行方

「10年後、ハードはタダ同然になる」とビル・ゲイツ氏
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0403/30/news067.html

確かに、これからのPC単体のスペックは大幅な発展が見込めないことから、タダ同然に近づいていくかもしれません。この点を考察するにあたって、今日の梅田さんのBlogは大変示唆に富んでいました。

連載1周年:日本にとって米国のIT産業は絶対ではなくなった?
http://blog.japan.cnet.com/umeda/archives/001111.html

この記事で注目したいのは、インターネットの"あちら側(巨大情報発電所)"と"こちら側(デジタル家電)"で日米の関心がずれているという指摘です。個人的にはPC上のソフトは、PCのハードと同じようにタダ同然になると考えています。よってインターネットの"あちら側"にはもう利益を生むものはないというのが専らの私の考えです。なぜなら、コンシューマがソフトに直接お金を払う機会がどんどん減っているからです。支払われるとすれば、究極のところはサービスを維持するための純粋な人件費(=メンテ代)だけに近づいていくでしょう。その原因がオープンソースであることは言うまでもないでしょう。同じ理由でSNN(Orkut、Greeなど)は、ユーザーから直接お金を取ることはできないことが容易に予想されます。利益になるとすれば、ユーザーの詳細なプロフィールによって可能となる、ピンポイント広告配信システムに支払われる広告主からの収入だけです。

ただし、SNNがそのような形でしか儲からないからと言って、ネット専業型企業のビジネスモデルを否定するわけではありません。Yahooやebay、国内では楽天といった一部の勝ち組企業はこれからも成長いくでしょう。しかしそれはソフトによるのではなく、また提供するサービスによってユーザーから直接収入を得るケースもまれだと思います。なぜなら、広告やECサイトの運営元などを間に挟んだ形態で利益を生んでいるからです。ネットオークション型の、言わば橋に交通量を課すビジネスモデルで成功できるのは今の勝ち組企業の中でも、さらにごく少数になるはずです。

従って、これからの10年でコンシューマーから直接の収入を得るためには、ハードで差異化を行う必要があります。それに伴い、ソフトはハードの付加価値の位置にまで転落する、と私は考えています。コンシューマーの"必要な用事を片付けること"に特化した多種多様なハードに"組み込まれたソフト"によって儲けるしかないからです。ソフト単体で莫大な利益が得られた一つの時代(era)はもう終わりに近づいているのです。

その兆候の一つとしてCPUアーキテクチャの大転換点が迫っていることが挙げられます。

CELLもそうですが、Intelも同様にマルチコア、マルチスレッドに舵をとっています。その流れの先には、シリコンフォトニクスの実用化をきっかけとする、並列(並行ではありません)&分散型プログラミングへの大きなパラダイムシフトが待ち受けているのです。

8bit/16bitCPU時代にアセンブラ職人がいたように、ネット上の複数のCPUの同期をとるような非常にプリミティブなコーディングが"しばらく"重宝されるようになるでしょう。並列&分散型パラダイムに対応したOSの実装には多大な時間が要されるので、PCのように約20年をかけて、ゆっくりと製品の競争力の観点でのソフトの比重が高まっていくことなるのです。

ここでインターネットの"あちら側"には、グリッドコンピューティングがあるではないかというご指摘が予想されます。しかし、並行&分散型プログラミングの最大の焦点はリアルタイム性だと思います。1ms単位未満のタイマ割り込みを保証できないPCアーキテクチャで分散処理を行っても先が見えています。スタンドアロンを前提としたアーキテクチャであるPCを繋いでも、科学技術計算や金融商品のシュミレーションのような大量のバッチ形式で処理される、ごく限られた用途にしか使えないと私は考えています。さらに、光ネットワークによってCPUが直結されるアーキテクチャが実用化された折には、最大のボトルネックがハードウェアになることは間違いありません。その時、IBM/ATを起源とする古いアーキテクチャは足枷に他なりません。以上の理由から、大量に繋がれたPCによって提供されるサービスがコンシューマーに対して直接価値を提供するかのように謳われる、グリッドコンピューティングには私は非常に懐疑的です。

さて、PC上のソフトがタダ同然になる以上、MS以外のPCソフトベンダーにはこれから地獄のような苦しみが待っています。ただし、大手SIerはアウトソージングによるホスティングのメンテで食えるので、すぐには、死活問題にならないと思います。SEの数が今ほどいらなくなるのは確かですが。そして、中堅以下のSIerや中小ソフトハウスはこれから非常に厳しいです。成熟したプラットホームにおいては、ごく少数の勝者しか生き残れないからです。例えてみれば、インターネットの"あちら側"には枯れつつある泉しかなく、年々量の減る湧き水ですらも、MSや一部の勝ち組みネット企業によって大半が飲み干されてしまうのです。ゆっくりと枯れてゆくPCという泉の中で、M$はしばらく過去最高売上&利益を更新しつづけることでしょう。

以上の理由から、これから10年間のソフトウェア産業の未来は、インターネットの"こちら側"、つまり光ネットワークで直結されて協調動作する、多種多様なハード上に組み込まれるソフトにあると思えてならないです。

#"わかった気になっている"だけの妄言かもしれません。その時は、4/1だったということで :)


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